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「その短剣、よければ譲ってくれないかな?」
ウロボロスのその言葉に、
「いやです」
Kuuは笑顔と共にあっさりと断った。
「これは、大切な資金源ですから。ただであげるわけにはいきません。」
そのときのkuuの目は、何かに取り憑かれたように輝いていた、とは花瓶の後談である。
「……なるほど。君はお金が欲しいんだね。」
「ええ! もちろんですよ!」
語尾に力を入れるkuuの言葉に、ウロボロスは微笑を浮かべると、優しく言った。
「"時は金なり"だ。そして今君は無限のときを有している。さて、それでは問題です。」
ウロボロスの目が怪しく輝きだす。kuuは自分がその光に飲み込まれそうになるのがわかった。
しかし抵抗できない。だんだんと体の力が抜けていく。
「時=金、としたときの今の君の財産は?」
「へ? れもいまあたしにかねはありませんよ?」
聞き返すkuuの瞳に輝きはない。既に飲み込まれてしまっている。ウロボロスは続ける。
「君には今あふれ返るほどの財産がある。はいかいいえで答えてください。」
「ほえ? いやれもかねはかねらから…」
既にkuuから判断能力は欠落していた。残っているのは金に対する執着心のみだ。
ウロボロスは口調をより強くすると、もう一度だけ問う。
「ファイナルアンサー?」
「は、はいなるあんさー」
…………
………………
……………………
永遠に続くかと思われた間の後に、ウロボロスが口を開く。
「残念。これは没収だ。」
そう残すと、ウロボロスはkuuの手から剣を取り上げ、その場からいなくなった。
kuuはそのまま立ち尽くしていた。やがて涙とともにひとつの台詞。
「かね…」
力の抜けたkuuに持たれていた袋入りの花瓶は、地面に落ちて割れていた。
「今、君は無限のときを有しているんだよ。もちろん、君だけじゃないけどね。」
ウロボロスはくすっと笑うと、ザンヤルマ○剣を握り締めると、それを粉々に砕いた。
「まずは一つ、か。さて次は、っと。ん? おかしいな。座標の特定が上手く……。」
その台詞を最後に、ウロボロスの姿は霧のように消えた。
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